2020年初頭から世界的に猛威をふるってきた新型コロナウイルス(COVID-19)により、我々の社会活動は大きな変化を強いられました。新型コロナウイルスは感染症であり、一見「がん」とは無関係なイメージがありますが、「がん」に関しても様々な影響が考えられます。 新型コロナウイルスの現状についても、その封じ込めに既に成功している国もあれば蔓延を続けている国もあります。その中で「がん研究」に着目したときに、新型コロナウイルスに関連して世界的にはどのような動きがあるのかを教えて頂ければと思います。
新型コロナウイルスの影響は、人々の生活や医療全般に及んでいます。がんも例外ではありません。世界中の医療機関で、がんの治療、検査、検診、予防活動などが遅れたり中断したりしています。その影響を調べるために、国際共同研究のタスクフォースが立ち上げられています(https://covidcancertaskforce.org/)。このタスクフォースは、新型コロナウイルスががんの患者さんや医療者、治療に直接及ぼす影響や、検診の中断による集団全体への影響、予防危険因子の格差の長期影響などを調べることを目的としています。国立がん研究センターでも、がん治療に携わる医療従事者へのアンケート調査や、検診の中断による影響をシミュレーションで定量化するプロジェクトなどに参加をしています。 国内の研究でも、新型コロナウイルスが社会生活全般に及ぼす影響を調べるインターネット調査や、LINEによる症状把握調査、職域のメンタルヘルスに関する調査、高齢者の生活に関する調査などが進められています。既存の大規模調査に新型コロナウイルス関連の質問を加える動きもあります。医学系の雑誌や学会もCOVID-19関連記事で埋め尽くされています。がん関連の3学会(日本癌学会、日本癌治療学会、日本臨床腫瘍学会)は合同で、がん診療に関わるQ&Aを公開しています(http://www.jca.gr.jp/researcher/c_q_and_a/index.html)。私が関わる日本疫学会でも、特設ページで感度・特異度など用語の解説や若手による研究紹介などを掲載しています(https://jeaweb.jp/covid/)。
がん研究も今後当面は新型コロナウイルス関連が中心になりそうです。
国立がん研究センターがん統計・総合解析研究部部長 片野田耕太
出典 The Way Forward No.18, 2020年