黒ニンニクやブロッコリースプラウト(新芽)などの野菜にがん予防作用があると良く耳にします。本当でしょうか? 仮に予防効果があるとして、どういった有効成分が含まれているのかを知ることはできるのでしょうか?
ヒトを対象とした疫学研究や、動物実験の結果から、ニンニク、タマネギ、ブロッコリー、キャベツなどの硫黄含有食品の摂取が、肺がん、胃がん、大腸がんなどのリスク低減と関連性があることが示唆されています。
これらの野菜に含まれるスルフォラファン、イソチオシアネート、アリシンなどの硫黄化合物が、がん予防効果の有効成分として知られています。これらの成分は、細胞の抗酸化活性や抗炎症活性を高めることで、がん細胞の増殖を抑制したり、DNA損傷を修復したりする効果が期待されています。また、解毒酵素を活性化することで、体内の有害物質を無毒化する働きも担っています。
近年、硫黄原子が直鎖状に連なった構造を持つ「超硫黄分子」が、動物や植物の体内で酵素的に産生されることが明らかになりました。超硫黄分子は、強力な抗酸化活性や抗炎症活性を示すことから、がん予防効果も期待されています。私たちの研究室では、超硫黄分子の定量測定法を開発し、様々な食品中の含有量を調査した結果、ニンニク、タマネギ、ブロッコリー、特にブロッコリースプラウトに豊富に含まれていることを発見しました。
さらに興味深いことに、ブロッコリースプラウト中には、解毒酵素を活性化するスルフォラファンと超硫黄分子が結合した新規化合物が検出されました。この新規化合物は、高い抗酸化活性を示すことが明らかになっています。
これらの研究結果から、硫黄含有食品には、超硫黄分子などの様々な硫黄化合物が存在し、これらが複合的に作用することで、がん予防効果を発揮していると考えられます。
しかし、食品中には未知の硫黄化合物が存在している可能性もあり、今後の研究によって更なる有効成分が発見されることが期待されます。
現時点では、硫黄含有食品をバランスよく摂取することが、がん予防に繋がる可能性が高いと言えます。
大阪公立大学大学院理学研究科生物化学
専攻分子生物学研究室
居原 秀
The Way Forward No.27, 2025