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がんQ&A

がんの未来

がんの未来

がん死亡率・罹患率

 がんの罹患・死亡率について述べることは学問的に正しいことですが、人間の病気はがんに限りません。しかも人間は必ず死を迎えるということは死亡率は100%となります。大事なことは人間が幾つのときに亡くなったかということもあるのではないでしょうか。つまりがんの罹患年齢、死亡年齢は医学以外の社会的ファクターが混在しますから学術的な解析は至難とは思います。でも例えば高齢者でも65歳で亡くなった人、75歳、85歳、90歳以上で亡くなった人達の家庭、社会に及ぼす影響は非常に大きな違いがあるように思うのです。年齢ということにもう少しく焦点を合わせた研究は疫学者のなかでどのように受け止められているのでしょうか?   

 死亡はそれが何歳であろうと重大なイベントであって、同等の意味を持ちますが、社会や経済へのインパクトや影響が異なることはご質問の通りです。疫学的なアプローチにおいても、Potential Years of Life Lost (PYLL、失われた潜在寿命年数)というような指標を算出し、平均寿命より早期に死亡することを予防するために利用されています。また、医療経済的アプローチでも、がん死亡による労働損失を算出し、経済的にもがんの予防や早期発見、治療によって死亡を回避することの重要性が示されています。また、国立がん研究センターの実施する遺族調査においては、患者の年齢別の解析はされていませんが、患者の死亡がいかに心理的に影響を与えるかの検証もされています。

 

 

国立がん研究センターがん対策研究所がん
登録センター センター長
松田 智大

The Way Forward No.27, 2025

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