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がんの未来

がんの未来

コロナとがんの関係は?

 コロナ、コロナで大騒ぎになっています。その陰でがんの検診を怠ってしまい、手遅れのがんになってくる心配はないでしょうか?

 直接の関係はありません。ただ心配なのはコロナの感染拡大にかこつけ、がん検診をためらったために、がん発見が遅れたり、悪性度が進んで生死にかかわる病期になって見つかるものが多くなってきたようです。特にがんのステージ2と3の違いが生死の分かれ目となることが多いのですが、これがほんの数か月の間に進行する可能性があります。
 肺がんや大腸がんなど主ながんの手術が4週間遅れると、死亡率が6~8%増えるとの最近のカナダでの調査データもありました。がんによる死亡者数が、コロナ死以上に圧倒的に多い事実(凡そ50倍)を、まず冷静に、また謙虚に受けとめ、コロナ騒ぎにかまけることなく、がんの検診をすぐにでも早く受けていただきたいのです。
 ウイルス感染が長引きますと、ウイルスが増殖の過程で変異を起こし(良性への変異株は自然淘汰されますが)、悪性(高い感染力とか高い致死率)の「変異株」が次第に優位になって大変厄介なことになることが少なからずあります。変異株がさらに二重変異を起こすこともあり、これがまた新たな感染爆発のリスクともなってしまうのです。
 「変異」といえば私達の正常細胞は主に変異によって「がん細胞」となり、そのあとも時間とともに変異を重ね次第に進行し悪性化していきます。ウイルスと細胞とは違いますが、「変異」という現象に関しては基本的には同じことで、比較的ポピュラーに起きている現象なのです。読者のみなさんもこの「変異」mutationというものによってウイルスでもがんでも段々悪くなっていくことに、もっと大きな関心を持っていただけたらいいなと思います。
 がんの病期は決して固定したもの、あるいは不変のものではありません。がんは時間とともにステージ1から2、3、4と、「遅かれ早かれ」次第に進行し、がんの大きさだけでなく、むしろ質的にその悪性度が高まっていくものなのです。がんは正常細胞から「変異」を重ねがん細胞に変わったあと、さらに時間とともに変異を重ね次第に悪くなっていきます。この事実をしっかり理解していませんと、「がんの早期発見は意味がない」「がんになっても何もするな、放っておけ」というような極端な話になってしまいます。

 

(公財)札幌がんセミナー相談役

小林 博

出典 The Way Forward No.20, 2021年

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