わが国でがんで亡くなる方は毎年37~38万人ですから、1日当り平均しますと1,000人以上になります。ところがコロナ死の方は1年に1万人いるとして、毎日30人となりません。1,000人と30人は桁違いの差です。死亡者数からみてのことですが、どちらの病気を重視すべきでしょうか?
比較すべきことではありませんが、ただ心配なのはコロナの感染拡大によって、がん検診をためらったためにがん発見が遅れたり、悪性度が進んで生死にかかわる病期になって見つかる人が多くなってきたことです。特にがんではステージ2と3の違いが生死の分かれ目となることが多いのですが、これがほんの数か月の間に進行する可能性があります。
肺がんや大腸がんなど主ながんの手術が4週間遅れると、死亡率が6~8%増えるとの最近のカナダでの調査データもありました。同じような報告は国内外から数多く出ています。
がんによる死亡者数は、コロナ死亡者の実に数十倍と圧倒的に多い事実を冷静に、また謙虚に受けとめ、コロナ騒ぎにかまけることなく、がんの検診を早く受けていただきたいと思います。このことがわが身をがんから守る唯一の道です。
(公財)札幌がんセミナー相談役
小林 博
The Way Forward No.21, 2022