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がんQ&A

がんの未来

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医療分野でのAIの成果

 AI(人工知能:Artificial Intelligence)は進歩し、人がそれを旨く利用していくのは結構かと思います。ただ、医療の面で現時点で具体的な成果を得ているは「画像診断」と「病理診断」の2つかなと思いますが、その他にも、たとえばAIで「自分に適切な食事はどうしたらよいか」「どのような運動をどのくらいしたらよいか」というようなこともわかるのでしょうか?

 AIの進歩は確かに目覚ましく、医療分野における画像診断や病理診断において特に顕著な成果が挙げられています。これに加えて、個々の健康状態に適した食事や運動に関する助言を提供するという点でも、AIは大きな可能性を持っています。

1)食事の最適化

 AIが個人の食事を最適化するためには、まず個々の健康状態、生活習慣、遺伝的要素、アレルギーや好みなど、多岐にわたるデータが必要です。これらのデータを基に、AIはパーソナライズされた食事提案を行うことができます。例えば、栄養学のデータベースと連携し、個人のカロリー摂取量、必要な栄養素、避けるべき食材などを考慮した食事プランを作成することができます。

 スマートフォンアプリやウェブベースのプラットフォームにて、ユーザーが日々の食事を記録し、AIがこれを分析して健康に良い食事選択を提案するというシステムが既に実用化されています。

2)運動の指導

 運動に関しても、AIは個々の体力レベルや健康状態、目標とする健康成果を基にカスタマイズされた運動計画を提案できます。ウェアラブルデバイスから収集されるデータ(心拍数、歩数、活動量など)を活用し、AIはその人の現在のフィットネスレベルに最適な運動種目や強度、時間を推奨します。

 また、AIが運動の反応をモニタリングし、必要に応じてプログラムを調整することで、効果的かつ安全に目標に到達する手助けをすることもできます。たとえば、リハビリテーションを必要とする患者に対して、AIが生成する適切な運動計画が、回復を早め、再発を防ぐ助けになることが期待されます。

3)総合的な健康管理

 これらの技術を組み合わせることにより、AIは総合的な健康管理のアシスタントとして機能することができます。AIの大きな利点は、膨大なデータからパターンを識別し、個々のユーザーにとって最も効果的なアドバイスを提供できる点にあります。これにより、個人がより健康的な生活を送るための具体的な行動指針を得ることが可能です。

将来的には、これらのAIシステムがさらに進化し、より多くの人々がその恩恵を受けることが期待されます。また、こうした技術が普及することで、予防医療の推進や生活習慣病の減少にも寄与する可能性があると考えています。

 

北海道大学大学院医学研究院

放射線科学分野画像診断学教室教授

工藤 與亮 
The Way Forward No.25, 2024

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