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がんを正しく知る

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医療費の抑制と医療の質について

がん治療の原則は外科手術と思いますが、放射線療法、さらには化学療法、そして免疫療法の進歩も著しいものがありますね。新薬の開発はわれわれには大きな希望を与えてくれていますので大変有難いことと思いますが、それにしてもそれらに使われる医療費は膨大なものになっていると思います。
実はこのことがわが国の恵まれた国民皆保険制度との狭間で大変な問題になりつつあります。つまり医療費の高騰をこのまま許していいのかということです。この点について率直なご見解をお洩らしいただければと思います。

分子標的薬やバイオ製剤等の高額な医薬品が、医療費の高騰に影響を与えていることは事実です。しかし、分子標的薬や免疫細胞療法で効果が期待できる患者さんも多数存在します。適正使用を推進するために、学会主導でガイドライン作成に注力しております。また、厚労省は複数のがん遺伝子変異を同時に調べることができる、がん遺伝子パネル検査の承認を了承し、今後更なる適正な患者さんへの使用による医療費抑制が期待できると推測できます。

国民皆保険制度の堅持は、医療提供の均霑化のためにも必要不可欠と考えています。一方、革新的医療提供を受けた患者さんの就労にも目を向ける必要もあります。QOLを維持し就労による国への貢献も国民の義務と考えます。

本邦の製薬産業もグローバル化を目指して、基盤強化を通じた原価コストの抑制や希少疾患に対する積極的創薬や開発を加速させることも重要です。先般、中央社会保険協議会にて新薬(機器)の年間販売金額50億円以上を対象とした費用対効果の骨子案が了承され、国民に理解・納得される薬価制度の抜本改革実現のため今後の議論に期待するところです。

現状は満足できる状況ではありませんが、医療費抑制と医療の質確保という両輪を回し、前輪で国民皆保険の堅持という舵取りを実現させる知恵を加速させる必要があると考えております。

九州大学名誉教授 前原 喜彦

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