抗がん剤による副作用に対する関心はもっとあってよいと思います。とくに抗がん剤の種類によって、それぞれ違った副作用が出てくるようですが、副作用を出来るだけ早く察知して早目の対処することによって副作用を少しでも軽減させることは大切なことと思います。 抗がん剤によって違うとは思いますが、一般的にどんな副作用がもっとも早く現れるものなのでしょうか? それを早く予知することは可能でしょうか?
抗がん剤によって出現する副作用も違いますがある程度予測、予防することはできます。また早期対処することで症状が軽く、早く改善する場合もあります。
抗がん剤は大別すると①昔からある殺細胞性の抗がん剤②最近開発が進んでいる分子標的薬③最新薬の免疫チェックポイント阻害薬の3種類となります。①の昔からある抗がん剤では吐き気や脱毛などが出やすいと言われます。しかし薬によって吐き気が出やすいもの、出にくいもの、脱毛するものしないものなどがあり使用する薬の特徴をよく知ることが大切です。あいにく脱毛はまだ充分な予防方法は確立していません。吐き気に関しては近年効果のある吐き気止めが開発されており治療中に実際に嘔吐してしまう方はごくわずかです。吐き気や食欲がないなどの症状は治療数日後に出ることはありますが早めに吐き気止めなどを工夫することで軽減する場合が多くあります。吐き気ですっきりしない感じが辛ければ次の治療の吐き気止めの内容など主治医と相談することをお勧めします。また便秘で苦労される方が多くいらっしゃいますので下剤など早めに使用して一日一回は排便があるようにコントロールすると良いでしょう。また治療後10日前後で血液の中の白血球が減少し発熱など出やすい状況となります。治療中は手洗いやマスクなど使用し外からの感染を起こさないようにするとともに口腔ケアをしっかりすることが大切です。②の分子標的薬は薬によって副作用が全く違います。皮膚の症状が出やすい薬剤などではあらかじめ皮膚の保湿ケアを行うことで副作用が予防できる場合もあり使用薬剤の特徴を確認し注意点やケア方法など医療者に聞くと良いでしょう。③の免疫チェックポイント阻害薬は自分自身の「自己免疫」を活性化させて間接的にがん細胞をやっつけます。頻度は多くありませんが免疫に関連する副作用が全身に出現する可能性があり十分な注意が必要です。この副作用は予防ができず早期に対処することが必要です。起こり得る副作用は様々ですが比較的間質性肺炎、内分泌機能の障害、下痢などが多いとされています。「いつもとの体調の変化」を感じた場合は医療機関へ相談しましょう。どの薬を使用する場合でも、普段の自分の体調を知っておくこと、「食べる」「寝る」「出す」という日常生活を整えることが大切なポイントとなります。心配なことはすぐ看護師などに遠慮なく確認してください。
北海道がんセンターがん化学療法看護認定看護師 高橋由美
出典 The Way Forward No.17, 2020年