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非燃焼加熱式タバコにどう対応するか

2014年11月フィリップモリスジャパンがiQOSのテスト販売を開始して以来、ここ数年の間に非燃焼・加熱式タバコが日本において普及しつつある。ニコチンを含む電子タバコは日本では医薬品とされ製造販売は実質上禁止されているが、非燃焼・加熱式タバコは「パイプたばこ」として認可されている。

喫煙者に対して、紙巻きタバコの、より害が少なくより安全な代替として非燃焼・加熱式タバコを提示しこれを勧めるとするのが、ハームリダクションの立場である。日本では馴染みがないが、注射薬物使用者において蔓延するHIV感染を、注射針交換プログラムやメタドンなどの経口薬物の処方による予防対策が、英国などでは広く実施され成果を挙げている。

これに対して、「予防原則」(Precautionary principle)は、「環境や人間の健康に危害をもたらすおそれのある活動に対しては、一部の因果関係が科学的に完全に確立されてなくとも、予防措置が講じられるべきである」(ウイングスプレッド宣言1998年)とするもので、対策が遅れて被害が増大した事例として喫煙のほかに水俣病などの反省がある。Philip Morris Internationalの研究者によってiQOSは紙巻きタバコに比して毒性が低いことが示されてはいるが、長期間の健康影響はまだ調査されていない。このため、「予防原則」の立場からは、非燃焼・加熱式タバコを勧めないとする。

ところで、現時点では禁煙治療によって禁煙に成功するものは約3割でしかない。わざわざ禁煙外来を受診しながら禁煙成功に至らなかった多くの喫煙者に接した経験を有するものとして、非燃焼加熱式タバコを提示し、これを勧めることは十分ありうると私は考える。がん予防に携わる研究者の間において非燃焼加熱式タバコに対する対応に関して活発な議論が行われることを期待する。

 

参考:電子タバコに関する議論

1. Dr. Peter Hajekの講演「電子タバコとハームリダクション 最新のエビデンス」、2016年8月、京都 https://www.j-stop.jp/topics/20160905.html

2. Yeh JS, Bullen C and Glantz SA. E-Cigarettes and Smoking Cessation. N Engl J Med 2016; 374:2172-2174

20190906-2

大阪大学大学院医学研究科社会医学講座環境医学招聘教員 大島明

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