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がんの未来

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食道がんに免疫療法は有効ですか?

 「免疫チェックポイント阻害剤は悪性黒色腫でその効果が認められて以来、いろんな臓器に適用の範囲が広がってきました。ついに食道がんにも適用の範囲が及んできたようです。食道がんは従来は外科療法主体でしたが、術前の放射線療法、化学療法が有効ということで、5年生存率は次第に高くなってきました。さらに今回、免疫療法が有効となれば食道がんの5年生存率のさらなる向上も期待できると思いますが、その効果はいかがですか?

 免疫チェックポイント阻害剤はすでに肺がんや胃がんなど様々ながん種で有効性が確認され使用されています。食道がんでもニボルマブ(オプジーボR)が、化学療法を行った後に増悪した食道がんに対する治療として、2020年2月に適応拡大されました。残念ながら効果がみられるのは4割程度の患者さんですが、今まで従来型の抗がん剤しかなく、吐き気や脱毛などの副作用に悩まされていた患者さんにとって、比較的副作用が少なく、一旦効果が見られれば長く継続する特徴をもつこのお薬は、大変インパクトのあるものと考えます。もちろん、このお薬だけでなく、従来から用いられていた抗がん剤や、手術、放射線療法を最大限駆使することで、治療効果を最大限にするという、食道がん治療の基本は変わりませんが、選択肢が増えることで、患者さんにとっても幅のある治療が行えるようになったといってもよいでしょう。

 一方で、免疫関連有害事象という、従来型の抗がん剤にはない副作用にも注意が必要となります。免疫チェックポイント阻害剤は、自身の免疫細胞を活性化させることでがん細胞を攻撃する治療ですが、自分の細胞を攻撃することがあり、攻撃の対象となる臓器に応じて、多彩な副作用が出現します。例えば、腸に対して反応すれば、腸炎となり、下痢が続きます。肺であれば、肺臓炎、ホルモンを産生するような細胞(甲状腺や、副腎など)を攻撃すると、ホルモンが産生されなくなり、だるい、きついなどの症状を呈することもあります。一般的に発生頻度は10%以下ですが、入院を要する症状が出る可能性もあり、注意が必要で、担当医とよく連携しながら治療を進めることが重要です。

 現在、化学療法や、化学放射線療法に対する併用効果を評価する臨床試験が行われており、ポジティブな結果が出れば、より多くの患者さんが免疫チェックポイント阻害剤の恩恵に預かることができるようになると期待されています。

 

国立がん研究センター中央病院 頭頸部内科科長/ 消化管内科医長/

バイオバンク・トランスレーショナルリサーチ支援室室長 加藤健

出典 The Way Forward No.18 2020年

 

 

 

 

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