私の夫は仕事から帰るのがいつも遅く家のことを何もしてくれません。たまに家にいると些細な事でけんかになりお互いにイライラしてしまいます。他の人から家事の手伝いをいつもしてくれるご主人の話を聞くととても羨ましく感じて、心が落ち着きません。このようにイライラした生活を送っていると乳がんにかかって、それがもとで亡くなってしまわないか心配です。
まさに自分の家庭の事を言われているようで、この質問に私の心も少し乱れてしまいました。現代社会はたくさんのストレスがかかる要因があります。仕事をされている女性の方は、職場と家庭と両方のストレスに悩まれているのかもしれません。このストレスががんの発症とか進行に影響をうけないか心配ですよね。
まず科学的なデータをお話しますと、ストレスが乳がんの発症に関連しているかどうか現時点では結論は出ていません。実はこれに対しては多くの研究がされており、関係があるという報告と関係がないという報告があります。このように結果が異なるのは、ストレスという因子を客観的に比較することが難しいことが影響しているのかもしれません。
ただ、過度のストレスは自律神経のバランスを崩すため、女性ホルモンの分泌に明らかに影響しますし、がん以外の病気たとえば心臓病などにも悪影響を示す可能性があります。ストレスと乳がん発症の関係が完全に科学的に証明されていなくても、心穏やかな生活は健康面に好影響をもたらすことは確実だと思います。
ストレスの解消法は様々いろいろな方法がありますよね。睡眠をしっかり取るのも一つの方法です。お酒でストレスを紛らわすのは、実はさらにストレスを増してしまう可能性があるので注意が必要です。タバコはもってのほかですよ。
北海道がんセンター副院長 高橋將人
出典 The Way Forward No.18 2020年