インフルエンザウイルスなどのウイルスの多くは動物由来といわれています。インフルエンザウイルスはカモとかアヒルとかの水鳥から豚、ニワトリなどの中間宿主を介して人間に感染性を持つようになったといわれます。エイズにしろ、エボラにしろ、今回の新型肺炎ウイルスにしろ、いずれも動物由来のウイルスが猛威をふるっているわけです。 細菌でいいますと、結核菌など多くの菌もかなり昔からの動物由来ということがわかっています。人間のピロリ菌の起源はどこにあったのでしょうか? まさか動物由来ということはあるのでしょうか?
非常に難しい質問です。ただ、アフリカで誕生したことはわかっており、人類の移動とともに、ピロリ菌もアフリカからヨーロッパ、さらにはアジア、新大陸へと移動したことがわかっています。
アフリカに棲むライオンからピロリ菌が見つかったというデータもあり、ライオン由来かとも思われたのですが、ヒト由来との結論がでています。我々の講座では、神戸の動物園から各種の動物の胃粘膜標本をいただき、調べたこともありますが、明快な回答は得られませんでした。ただ、ピロリ菌ではなく、ヘリコバクター属ですと、ピロリ菌と近いものがイルカなどから見つかっており、イルカからヒトというルートも想定されます。そのため、現在、我々は海洋動物からヒト、というの可能性に注目しています。
大分大学医学部公衆衛生学教授 山岡吉生
出典 The Way Forward No.18 2020年