(一財)日本尊厳死協会の会員数は約11万3,000人で、平均年齢は78歳です。会員がご高齢なので毎年3千~5千人の方がお亡くなりなりますが、遺族の方にはアンケートをお願いしています。それによると、亡くなった方の年齢は80歳代が最多で、90歳代、70歳代と続きます。死亡原因はやはり「がん」が一番多く、次いで「肺炎」です。最近では「老衰死」という診断名も増えてきました。
2025年問題をご存知でしょうか。あと7~8年もすると、日本の高齢者人口が3,500万人になり、そのうちの5人に1人、700万人が認知症になると言われています。また、高齢者の独り暮らしが680万世帯に増え、その多くは都市で生活する高齢者であると予測されます。そして、それ以上に、140万人以上の高齢者が死んでいく高齢多死社会になるということです。
日本は1899年から人口動態統計を作成していますが、これをもとに年齢階級別死亡数を年次ごとに見ていくと(図参照)、第二次大戦後までは、乳幼児・新生児の死亡が圧倒的に多く、平均寿命は50年と言われていました。また、10代から40代までの年齢層で一定数の死亡者がいましたが、75年以降は20代とか30代で死ぬ人たちが激減しています。医療の普及により青壮年層も死ななくなり、80年代を過ぎてからは、お年寄りばかりが大勢死ぬ時代になりました。
2013年8月、内閣総理大臣あてに提出された社会保障制度改革国民会議報告書には、「超高齢社会に見合った『地域全体で、治し・支える医療』の射程には、そのときが来たらより納得し満足のできる最期を迎えることのできるように支援すること ― すなわち、死すべき運命にある人間の尊厳ある死を視野に入れた『QOD(クォリティ・オブ・デス)を高める医療』 ― も入ってこよう」とあります。
QODを高める、人生の最期に何をするのか。「終活」という言葉をよく聞きます。お墓の問題、老後の生活、遺産相続、いろいろな始末をしなければなりませんが、終末医療の部分がやはり大きな話題です。終末期の医療について自分の意思を前もって書面で示すこと、これがリビングウィルですが、自分で意思表示ができない認知症や、高次機能障害に陥った場合には、本人のベストインタレストを代弁する代理人が必要です。
がん患者の場合、終末期はある程度想定でき、疼痛緩和のための終末期鎮静を除き本人も最期まで意識がはっきりしていることが多いと思われます。残された日々を充実したものとするために、リビングウィルは今後の高齢者多死社会においては必要不可欠です。日本全体でリビングウィルの所持者は3%、ドイツ(12%)、アメリカ(25~40%)には遠く及びません。協会には北海道支部があります(TEL:011-736-0290)。札幌がんセミナーの関係者の方々にも広く、登録をお勧めする次第です。
図:年齢階級別死亡の推移
(一財)日本尊厳死協会理事長 岩尾総一郎