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がん治療について

がん治療について

免疫療法はどれくらい期待できるのでしょうか?

免疫とは外部から侵入する病原体や体内に生じるがんなどの異常細胞を、異物(自分でないもの)として認識し排除する生体の防御機構です。がんの免疫には樹状細胞、マクロファージ、リンパ球など様々な免疫系細胞が複雑に関与して、がん細胞を排除しています。

われわれの体内では1日に5000個ものがん細胞ができるともいわれ、免疫系細胞はそれらを攻撃して死滅させます。しかしながら、がん細胞の中には免疫監視機構による認識や排除から逃れる能力をもつものも現れ、それらが塊としてのがんとして成長し始めます。

がんに対する免疫療法の歴史は古く、1950年代から免疫を高めるための様々な研究が行われていました。しかし、これらの攻撃力を高める方法では十分な結果は得られず、標準的な治療法として確立されたものはほとんどありません。

その一方で、近年の研究からがん細胞が免疫系細胞の攻撃にブレーキをかけていることが判明しました。そのブレーキを解除するために開発されたのが免疫チェックポイント阻害薬です。この薬剤を投与するとがん細胞に対する免疫系細胞の攻撃力が回復し、それらを死滅させます。免疫チェックポイント阻害薬は既に悪性黒色腫、肺がん、胃がん、腎がんなど数多くのがんで治療効果が確認され、現在保険適応のある標準的な治療として確立しています。

21世紀に入り新規抗がん剤や分子標的治療薬が開発され、がんの治療成績は確実に向上してきました。しかし、延命は期待できるものの完治は難しいのが実状でした。

そのような中、2011年に初の免疫チェックポイント阻害薬であるイピリムマブが承認され、その後もニボルマブ、ペンブロリズマブ、アテゾリブマブなどの新薬が次々と登場し、がん治療に革命が起こりました。免疫チェックポイント阻害薬の投与を受けた患者さんの中には、長期にわたり病態が安定し、中には完治と考えてよい人が一定の割合で出ているのです。

免疫チェックポイントには様々な分子が関わっていることから、現在それらに対する薬の開発が急速に進んでいます。さらに、従来の抗がん剤や分子標的薬を組み合わせた複合的な免疫療法の研究が盛んに行われています。これらの治療開発により、転移や再発したがん患者さんが完治を目指せる時代がすぐそこまで来ていることを期待します。

国家公務員共済組合連合会斗南病院腫瘍内科 辻 靖

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