子ども世代への「がん教育」がなぜ大事なのですか?
がんは罹った人の6、7割は治る時代になってきました。がんイコール死の時代に比べ医学・医療の進歩は非常に大きなものがあります。さて、それではこれからはどうすべきか?
がんは、少なくともその発生そのものは人類にとって避け得ない永遠のものです。ですから、がん対策も超長期的な視野で考えていかなければなりません。とすれば私達がいままで得てきたがん情報、少なくともそのエッセンスを、次世代、あるいは次々世代の若い人達に的確に引き継いでいかねばならないと思います。
「子ども達へのがん教育」は成果が表れるまでに余りにも長い時間がかかるとの懸念もあります。ただ、がん教育の成果は「子どもが大人を変える」ほどの速効的な効果の現れることもあります(「子どもの力でがん予防」小学館101新書 2011年)。仮にもし効果が出るまでの時間がかかったとしても、現在を生きる私達はこれから生まれてくる新しい世代の人達への伝承の責任は何としても果たさなければならない、と考えるのです。
病気はがんだけではありません。がんは死因のトップではありますが、死因の2、3位以下、がん以外の疾病もたくさんあります(なぜがんだけが特別なのか、との疑問も当然です)。そこでがんをいろいろな病気の看板役に仕立てて、2、3位以下の病気を含め、医学全般についての常識とか健康についての基本を子ども達に伝えていく。このことが、子ども達にとってだけでなく、わが国の将来にとっても極めて大切なことではないかと思うのです。
(公財)札幌がんセミナー相談役 小林 博
The Way Forward No.22, 2022