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がんQ&A

がん治療について

がん治療について

治療と仕事の両立

 全国的にがん治療と仕事の両立支援についての関心が高まってきています。各地のがん拠点病院のなかで対応が進みつつあると思いますが、大学病院でもそういうものを作る動きが出てきました。北海道大学ではさらに、最近、教育研究施設に療養・就労両立教室というものが出来たとも聞いております。大学病院や医学部・大学院にまでそのようなものを作る意図はどういうことなのでしょうか?

 だれでも、がんを発症した場合には、仕事を継続してよいのか、休止すべきなのか、いつ復職してよいのかなど、いろいろ心配になるはずです。一方で、がんの治癒率が高まり、70歳定年が叫ばれる今、がん治療と仕事等との両立は、すべての国民、ひいてはわが国の発展にとって非常に重要なことです。産業医や両立支援コーディネーターの講習会などの頻度は増えていますが、肝心の医療機関やがん治療医側の対応や大学病院での教育・研修が不十分でした。北海道大学病院では、産業医科大学病院の見学や札幌医師会・北海道労働保健管理協会のご協力等などを経て、今年4月1日に、腫瘍センター内に私を含む医師数名と両立支援コーディネーターの研修を受講した看護師1名・社会福祉士3名とで両立支援チームを立ち上げました。主治医や会社の方からの情報をもとに、治療中に仕事をする上で配慮してほしいことを会社の方に伝えたり、主治医に仕事との両立を配慮して治療計画を立てるための情報提供やアドバイスをできる体制を整えました。
 この過程で、①がん治療の優劣を判断する指標として従来の生存率・安全性・生活の質(QOL)等に加えて、経済毒性(FT)が現在の大きな課題であること、②その解決には、療養と就労の両立に関して、臨床医学だけではなく、がん生物学・薬理学・放射線生物学・社会医学の点から、科学的議論・研究が必須であること、を痛感しました。幸い、北海道大学医学研究院の多くの教授が、そのような新たな分野の必要性に賛同してくださり、それらの教室とともに、同じく2020年4月1日から医学研究院連携研究センターに「療養・就労両立医学分野」が設立されました。同分野内で、私は、「療養・就労両立医学教室」という新しい教室を担当し、厚生労働省科研費等を使わせて頂きながら、新たな学問分野の構築に取り掛かっております。

 

 

北海道大学大学院医学研究院連携研究センター療養・就労両立医学教室教授
白土博樹
出典 The Way Forward No.18 2020年

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