タバコはがん、とくに肺がんとの濃厚な関係がいわれています。我が国の喫煙率もかなり低下してきました。日本に限らず外国を含め、喫煙率が下がったことで、つまりタバコを止めたことでがん、とくに肺がんの発生(罹患)とか死亡が減ったという具体的なデータはあるのでしょうか? あるとしますと簡単でもご紹介いただけますでしょうか。
禁煙によって肺がんが減ることを最初に証明したのは米国です。1964年にタバコに関する最初の厚生長官報告が発表されてから、米国の紙巻きタバコ消費量は減り始め、30年後から男性の肺がん死亡が減り始め、40年後から女性も低下を始めました。
青線:タバコの消費量、赤線:肺がん死亡率(男)、緑線:肺がん死亡率(女)
日本でも、喫煙率低下からほぼ30~40年ほどたってから肺がん死亡率低下が始まっています。喫煙開始から発がんまでのタイムラグを正当に反映したトレンドです。1995年ころまでは、「喫煙率が減っているのに、肺がん死亡率は増えているから、喫煙は肺がんの主因ではない」という非科学的な主張がありました。いまではそのようなことを主張する方はおられないと思います。
日本人男性の喫煙率と肺がん死亡率(酒井健司医師作成。喫煙率のデータ:厚生労働省のサイト;肺がん死亡率:国立がん研究センターがん情報サービスのサイト)
禁煙すると肺がんリスクが減ることは個人レベルでも証明されています。文科省が2001年に発表したコホート調査の結果によれば、肺がん死リスクは禁煙後どんどん低下し、15~20年後には非喫煙者と同じレベルまで低下することが分かっています。
道北勤医協旭川北医院院長 松崎道幸
出典 The Way Forward No.18 2020年