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腫瘍マーカーCA19-9とは何のことですか?

 叔父が膵臓がんになり、CA19-9という腫瘍マーカーの値が高いことがわかりました。CA19-9って何だろうとインターネットで調べてみたところ、糖鎖抗原の一つと書いてありました。糖鎖抗原とは何なのでしょうか? またそれが膵臓がんの患者さんの血液中に多くなるのはどうしてでしょうか? さらに膵臓がんにおいてどのような役割をしているのでしょうか?

 CA19-9はがん患者の血液中で数値が上昇します。このような物質は腫瘍マーカーと呼ばれます。肝臓がんのAFP、前立腺がんのPSA、消化器がんのCEAなどがよく知られている腫瘍マーカーです。いずれも抗原物質であるAFP、PSA、CEAをそれぞれマウスなどに免疫をして、それを認識する抗体を採取し、抗原抗体反応を利用して測定します。
 1978年に米国のコプロフスキー博士が、培養がん細胞を抗原としてマウスに免疫をし、がん細胞にのみ反応し正常細胞には反応しない抗体を検索し、がん細胞の抗原に特異的に反応するモノクローナル抗体と呼ばれる抗体を取得し、その抗原をCA19-9と名付けました。正常値は37U/ML単位とされています。特にすい臓がんで80%程度が高値を示します。膵蔵がんの手術後の経過観察や再発などの診断には参考になります。数値が高くなっているとがんが大きくなっているか、がんが再発していると予測します。数値が低くなっていると治療効果がでていると考えます。早期の膵臓がんでは高値を示すのは20%程度ですので早期診断にはそれだけでは有効でありません。胆のうがんでもほぼ同様の割合で高値を示します。そのほかの良性腫瘍、肝臓がん、肺がん、大腸がん、胃がんまた、卵巣がんなど婦人科の悪性腫瘍でも高くなります。胆石、胆のう炎、肝炎、慢性膵炎では20%程度が陽性になるとされています。特に炎症性疾患では数万U/MLにも上昇することがありますが、炎症が治ると正常化しますのでがんと識別できます。糖尿病、膠原病でも陽性になることがあります。
 CA19-9は血液中ではムチンとよばれる高分子のタンパク質に結合しています。4個の糖からなる血液型抗原のひとつのシアリルルイスAという物質です。人口の5-10%の方がこの抗原を作らないため、この方たちはがんになってもCA19-9は高くなりません。この場合にはDUPAN-2という物質を測定して補います。

 

大阪国際がんセンター研究所長、大阪大学名誉教授 谷口直之
出典 The Way Forward No.18 2020年

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