今や、がんは2人に1人がかかる時代です。膵がんはその中でも難治がんの一つとされており、現在がんの死亡原因の第4位となっています。膵がんが難治がんと言われる理由の一つが、膵臓が存在する場所があります。体の奥にあり、いわゆる人の内臓全体を言い表す『五臓六腑』の中に入っていない、わかりにくい臓器なのです。したがって、がんができても小さいうちは症状がなければ見つけることができず、症状が出て発見されたときには周りの血管などに進展していたり、肝臓や肺に転移していたり、外科的に切除できない場合が多いのです。しかし、諦めてはいけません。早期発見そして早期治療をすれば、根治も可能です。
そこで大切なのは症状です。実は患者さんに詳しく症状を聞いてみると意外に以前から何らかの症状があるのです。特に、みぞおちの痛みや背中の痛みがある場合で、胃カメラなどでも異常がない場合には膵がんを疑ってあとでお話しする専門医の診察を受けることをお勧めします。また、膵がんの危険因子を知っておくことも重要です。糖尿病、慢性膵炎、膵のう胞は危険因子の一つです。さらに、家族内に2人以上膵がんの患者さんがいる場合には膵がんリスクが高くなるため専門医を受診することをお勧めします。
以上のような症状や危険因子がある場合には、次のステップとして腹部エコー、CT、MRI検査といった比較的どこの病院でもできる画像検査を行います。それらの画像で異常があった場合には、胃カメラの先に小さな超音波装置がついた特殊な内視鏡の超音波内視鏡検査を行い、胃や十二指腸を通してその奥にある膵臓全体を調べます(図)。必要があれば0.7mm程度の極細い針で組織を取ってくることも可能です。現在多くの施設でこの高精度の超音波内視鏡が導入されており、膵がんの早期発見、早期診断に役立っております。膵がんについて検査をしたい、治療法を知りたいなどがある方は、日本膵臓学会が認定しているお住まいの近くの膵臓指導医にご相談ください。
東京医科大学臨床医学系消化器内科学分野 主任教授 糸井隆夫
The Way Forward No.22, 2022