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がんQ&A

がんの未来

がんの未来

AIによる診断の未来?

 がんの診断はAI(人工知能)が診断するようになるのですか?  

 はい、そうなります。

 このように言い切るとセンセーショナルですが、正しくは、「一部AIが診断することもある」ということです。がんの診断は、患者さんを診察して、触診したり、聴診をして予想を立てます。また血液検査でがんのマーカーが上昇しているかどうかなどを調べます。中でも、CTスキャンやMRI検査などの画像を撮影することも重要です。医師がその目で見てがんの診断をするわけです。このように、目で見て判定することががんの診断ではいくつかの専門医によっておこなわれていますが、現在AIが得意としているのが、この「画像認識」の部分です。

 具体的には、胃カメラでがんの診断は内視鏡の専門の消化器内科の先生が行います。X線やCT、MRIなどの撮影した画像は、放射線診断科の先生が行います。目の奥を見る眼底鏡も眼底写真が撮影されます。皮膚科の先生は皮膚を見て判断します。また、胃カメラや大腸カメラで組織の一部をつまんで取り出した時や乳腺や肺、肝臓や腎臓に針を刺して組織の一部を取り出して調べる時は、病理医がミクロのレベルで観察して診断します。

 これら胃カメラ、X線画像、眼底鏡、皮膚、病理画像は全て写真に撮ることができます。全国の大学や病院に何百万もの撮影された画像が保存されています。これらの医療財産を活用することが、国が設立した研究機構が主導して行われています。わが国の医学研究はAMED(国立研究開発法人日本医療研究開発機構)という機関が統括していますが、平成30年度 から「臨床研究等ICT基盤構築・人工知能実装研究事業」として、関係する学会を中心とした研究として進められています。

 AIには、大きく分けて2つのタイプがあります。1つは囲碁や将棋のようにルールを与えて対戦するタイプのAIで、このタイプのAIは対戦を重ねるごとに学習して強くなります。がんの診断は、画像をみて専門医が判断しますが、その場合は、文字におこせるようなルールはありません。がんの画像10万枚と正常の画像10万枚を学習させて覚え込ませます。いわばスパルタ式の勉強です。学習させる画像は教師データと呼ばれます。今、将来の夢のAI先生を作るために、医師が膨大な労力を使ってAI様(さま)に勉強してもらうための教師データを作っているのは皮肉です。

 いずれ疲れを知らないAI画像診断システムが出来上がり、医師のお手伝いをする日が来ます。単純な部分は疲れを知らないAIが行うようになるでしょう。医師はAIを監督したり、AIにはできないような、より判断が難しい診断を行うということになるでしょう。大事なことは新しいITCの技術を取り込んで、がん患者さんにいち早く正確な診断を届けることです。

 

北海道大学大学院医学研究院腫瘍病理学教室教授 田中伸哉

出典 The Way Forward No.17, 2020年

 

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