「現代社会ではがんが増加している。人類が地球環境を汚染していることががんの原因だからだ」と聞いたことがあります。本当ですか?
がんが発症する原因はさまざまです。国立がん研究センターがん情報サービスには、科学的根拠に基づくがん予防が紹介されています。現段階ではっきりとがんの原因だと分かっているのは、喫煙、飲酒、運動不足、肥満、食習慣(塩分過剰、野菜・果物不足など)などであり、これらを改善すると約40%のがん発症リスクの減少が期待されます。私達は、このようにはっきりと裏付けがあるやり方でがんを予防することが期待されています。残念ながら原因が分からないがんが多くあるのも事実ですが、はっきりいえることは、人類が地球環境を汚染する以前からがんという病気は存在したということです。例えば、伊達政宗や徳川家康は症状からがんで亡くなったのだろうと推測されていますし、THE WAY FORWARD No.18では古代エジプトのミイラにがんの痕跡が認められるケースが紹介されています。また、恐竜の骨の化石の中には、骨肉腫(骨のがん)がみられるものがあると報告されています。
以上から、「現代社会ではがんが増加している。人類が地球環境を汚染していることががんの原因だからだ。」という表現は必ずしも正しくないと考えられます。
弘前大学大学院医学研究科 医学医療情報学講座 助教 田中里奈
出典 The Way Forward No.19 2021年